木々の葉の美しいグリーン。
穏やかに心が癒され、元気なパワーが溢れてきます。
5月は森林浴に最も適した季節。
木や森などの自然を連想する色でもあり、安心感や調和を表しヒーリング効果が高いと言われる緑色。
そんな色相をもつ5月の誕生石であるエメラルドと翡翠は平和や安らぎといった健康的な緑の中にも、
爽やかなイメージだけではない、人々を魅了する不思議なパワーが宿っていると言われてきました。
深い森の中の静寂は神秘的でもあり、手ごわく妖しげな色香も感じたりする色ではないでしょうか?
エメラルドと翡翠の癒しの緑色は反面ミステリアスな魅力のある宝石だと感じませんか?
今回は奥深い森の如く広がるグリーンカラーに隠された魅力について、2週に渡ってお届けいたします。
今週は「エメラルド」について。
エメラルドってどんな石?
エメラルドという名前は、「緑」を表すサンスクリット語「スマラカタ」や、「緑の宝石」を意味する
ギリシャ語「スマラグドス」などに由来するといわれています。
ダイヤモンドやルビー、サファイアと共に「世界四大宝石」のひとつとして広くその名が知れ渡り、
エメラルドグリーンという色があるように、美しい緑色の象徴でもあります。
古代より永く愛されてきたエメラルド。 その魅力をご紹介します。
エメラルドの歴史や伝説~クレオパトラも愛した宝石
エメラルドの歴史は古く、何世紀にも渡ってさまざまな場面や伝説に登場します。
ローマ神話においても、自然を司ることから「愛と美の女神ヴィーナスに捧げる石」と呼ばれることもあるのだとか。
聖なるパワーを持つとされてきたエメラルドは、かつては治療や治癒など、眼や神経を癒す天然の精神安定剤と考えられていました。
またこの宝石は「英知、直感力、精神性」を高め、持つ人に「希望」をもたせ「喜び」や「成功に導く」といわれ、現在の宝石言葉である 「幸運・幸福・夫婦愛・安定」 などにもつながります。
ジュリアス・シーザーは、この石のもつ癒しの力を信じていたので、熱狂的にエメラルドを収集したそうです。
中でも、最も熱愛した人物として有名なのが、クレオパトラです。
専用の鉱山を持ち、自慢のエメラルドを各国の大使にプレゼントしたと言われています。
また美の面でも、絶世の美女クレオパトラは細かく砕いてアイシャドウとして使っていたとか。
美しいエメラルドを武器にその魔性の微笑みの奥で、政治的な戦略を目論んでいたのかもしれません。
中世ヨーロッパで広く渡った数々の聖杯伝説において、キリストが弟子たちと過ごした最後の晩餐で使用した聖杯は、エメラルドを彫ったものだと言われています。
エメラルドで彫られた聖杯はキリストが処刑された時にその血を受けたとされ、若さと純潔を保たせ、命を延ばす不思議な力があるという言い伝えもあります。
エメラルドの産出国
エメラルドの代表的な産出国は、コロンビア、ブラジル、パキスタン、アフガニスタン、アフリカのザンビアやジンバブエなど。
特にコロンビアは世界シェア60%を超え、500年以上もの永きに渡って最高基準のエメラルドを産出しています。
またザンビアのンドラ地方制限区の鉱山は、より濃い色のエメラルドが採掘されることで有名です。
エメラルドの特徴
エメラルドは、3月の誕生石アクアマリンと同じベリル鉱物の仲間です。
内包物が多い石なので、透明度が高く鮮やかになるほど高級とされ、価値が高くなります。
しかしながら、『傷のないエメラルドを探すのは、欠点のない人間を探すようなものだ』と揶揄されるほど、
内包物(インクルージョン)のないエメラルドを探すのは困難なことです。
ベリルの中でもエメラルドだけが非常に過酷な環境で結晶化するために、必然的に内包物が混ざってしまうのが要因です。
しかしそれこそが、天然のエメラルドであるという大きな証。
ベリルはクロムを含むことで緑色に変化し、エメラルドの美しい輝きを生み出しているのです。
ちなみに、ベリルに鉄が入ると水色のアクアマリンに、マンガンが入るとピンク色のモルガナイトに変化します。
透明度とクラリティは、カラーストーンにとって大切ですが、エメラルドが持つ内包物については、ジュエリーの専門家や、ジュエリーが好きな消費者には理解し容認されています。
それは、エメラルドがもつ個性であって致命的な物ではないのです。
むしろ、あまりにもクリアで透明度の高い無疵(ムキズ)のものは、人工石である可能性があるので要注意です。
エメラルドができた時に閉じ込められたインクルージョンを眺めて、ロマンティックな時の経過を楽しむのはいかがでしょうか。
エメラルドの原石には亀裂 (フラクチャー) が多くあるため、カットには非常に困難を要します。
カッティングだけでなく研磨やセッティングの際、または完成品を楽しむ際に日常の不注意な着用によって損傷を受けやすいので注意が必要です。
エメラルドを身につけたまま、手を洗ったり洗い物をしたりするのは避けてくださいね。
このように石を損傷から守り、形状の美しさと重量を活かすためにも、ダイヤモンドのような多彩なカットはできません。店頭で多く見かけるのは、角を斜めにカットした長方形の「エメラルドカット」。
石を横から見たときに階段状に見える「ステップカット」の一つで、エメラルドを美しく見せるために特別なカットが採用されています。
また一方は丸みを帯び一方は尖った洋ナシを意味する「ペアシェイプカット」もお馴染ですね。
魅惑的なエメラルド
美しいエメラルドは価格もお手頃とは言えません。
誰でも気軽に手を出せない威厳ある豊かさをまとった美しさは、クレオパトラや歴代の有名女優達を虜にしてきました。
時を経た今日では、現代に生きるパワフルな女性にこそ似合うのかもしれません。
但し、この魅力に侵された人は、男性女性問わず、きっと必ず手に入れるはずです。
それは、もはや逃れられない呪縛のようなもの。
きっと紆余曲折を経て、エメラルドにたどり着くことでしょう。
その時のあなたは、エメラルドに負けない魅力をすでに身につけているはずです。
新緑が芽生える5月に相応しい宝石エメラルド。
あなたも、エメラルドの持つパワーを感じてみませんか?
次週はもう一つの5月の誕生石「翡翠」についてお届けします。
ライター:綺羅子