日差しをあびてキラキラ輝く海を連想させる「アクアマリン」の水色。
空の青とは違い、薄くやや緑がかった透明感のあるアクアマリンは、魚座とも関係深い3月の誕生石
としてたいへん人気のある宝石です。
名前の由来は、ラテン語で「海と水」をあらわす“アクア”と“マリナス”からきています。
神話では『美しい海の精の宝物が波にさらわれ、浜辺に打ち上げられたのが淡い青の宝石“アクアマリン”であった』という言い伝えがあります。
“人魚の涙”という美しい別名をもっており、透き通る薄青色は女性たちを虜にします。
その名のとおり古代ヨーロッパでは、海との関わりも深く、船乗りたちの間では航海安全や豊漁など
海の力の宿った“航海のお守り”として大切にされてきたそうです。
また、ろうそくなどの夜の明かりの中で、幻想的で美しく輝くことから夜会用の“夜の宝石の女王”
としても好まれていました。
新約聖書にも登場するほど歴史の古い石ですが、怪しい逸話などはあまり聞きません。
透明感のあるアクアマリンの淡いブルーは、清楚で心地よいイメージがあるのが人気の理由の一つ
ではないでしょうか。
アクアマリンとエメラルドの関係性について
アクアマリンは、ベリル(緑柱石)という鉱物の一種です。
ベリルファミリーは、その色によって異なる名前がつけられています。
ブルーの輝きをもつのがアクアマリン、ピンク色はモルガナイト、黄色はイエローベリル、
赤色はレッドベリル、黄緑色はヘリオドール、透明はゴシェナイトなどと呼ばれており、
その中の緑色がエメラルドです。
五大宝石でもある貴石エメラルドとアクアマリンは、まさに姉妹のような関係なのです。
不純物を含まない純粋なベリルはほとんど無色ですが、鉄分やクロム、バナジウム、マンガンなど、
様々な元素が混入することで色鮮やかに変化し、その中でもアクアマリンは透明度が高く、微量の鉄分が加わり水色を発します。
ベリルに微量のクロムやバナジウム等が混ざり緑色の輝きを発するのがエメラルドになります。
華奢でありながら凛とした美しさとオーラを放つのがお姉さんのエメラルドだとしたら、
対照的にアクアマリンは明るく爽やかな妹といった感じでしょうか。
それにしてもアクアマリンとエメラルドがファミリーだったなんて少し驚きではありませんか?
アクアマリンの色と価値
アクアマリンの原石は、黄色味あるいはやや緑がかっている場合が多いので、市場に出回っている
水色のアクアマリンは、熱処理により水色を引き出しているものが多くお求め易い価格で楽しむことができます。
硬度も高くキズがつきにくいので、耐久性にも優れ、気軽に身に着けられるのも人気の一つです。
天然のアクアマリンは、透明度があり水色が濃いほど価値が高く美しいと言われており、
色味が淡くなれば価値も下がります。
20世紀前半にブラジルのサンタマリア・デ・イタビラ鉱山でひときわ美しいアクアマリンが産出された
ことから最高品質のアクアマリンは「サンタマリア」と呼ばれています。
深いブルーと吸い込まれるような透明度の高い美しさは最高級の美しさで大勢の人を魅了しました。
後にサンタマリア鉱山は枯渇されてしまった為、ブラジル産のアクアマリンは、幻と言われるほど
希少価値が高まっています。
その後、1970年代にアフリカのモザンビーク鉱山で同質のアクアマリンが産出され、
「サンタマリア・アフリカーナ」と名付けられました。
現在、「サンタマリアアクアマリン」も「サンタマリア・アフリカーナ」のどちらも大変希少価値が
高く、大粒で良質な石はめったに市場に出回りません。
今では同等の美しさを持つアクアマリンは、産出国に関係なく「サンタマリア」と呼ばれています。
このようにアクアマリンの価値は、色の濃さや透明度によって評価されます。
また、アクアマリンの結晶は比較的大きなものが産出されるため、ブリリアントカット、オーバルカット、ファンタジーカットや装飾品など、どのような形にも加工されやすいので、デザイナーや宝石彫刻家に人気があります。
幸福・富・聡明 ~幸福な結婚を象徴する石
アクアマリンは、幸せと富と喜びを象徴する石として人気があります。
結婚を長い旅路に例え、富と喜びに満ちた航海へと導いてくれると言われており、愛する人との結婚を
夢見る女性たちにとって頼りになるジュエリーとして人気があります。
全ての生命の源である海…
そんな海を、まるでとじこめたかのような神秘的なエネルギーが、穏やかな波に浮かぶように安心感と
幸せな気持ちに導いてくれるのではないでしょうか。
長い航海には、海の青が輝く日もあれば、荒れ狂う激しい波が押し寄せる日もあります。
どんな時でも明るく聡明な水色の輝きが、心の乱れを整え穏やかにやさしく癒してくれるでしょう。
幸せな結婚生活を願い親から子へと…
大切な友人の旅立ちを祝って…
人とのコミュニケーションをスムーズに…
新しい経験がたくさん増える “はじまりの春” に、大切な誰かを想ってプレゼントするのもステキですね。
ライター:綺羅子